――― 『わたしは断言してもよいが、中立を保つことは、あまり有効な選択ではないと思う。』 ニコロ・マキャベリ
ディプロマシーを「うまくプレイできない人」に顕著に表れる傾向が、中立的な言動(つまり外交と行軍)をすることにあります。
例を過去卓からピックアップしてみました。
『ドイツの方針としては英仏両国と友好関係(のふり)保ちながらチャンスを伺おうとの考えでした』初回独PLの発言
『みんな様子見でスタートしますよね』『序盤に喧嘩売っても旨みないです』初回英PLの発言
また行軍では、直近にプレイしたボイスチャット会では7国中4国が初年度春に維持命令を含む行軍でした。
こういった例を拾っていけば限りは無いですが、ほとんどの場合において、
中立的な外交と行軍を行ったプレイヤーは、勝利することも、何かを成すこともありませんでした。
なぜそうなるのでしょうか? 2つの点から考えていきます。
- ディプロマシーの基本構造と中立
ディプロマシーの基本構造を4コマにしてみました。
上記を文章化すれば、
A 他国と同盟し共同して敵国を攻撃する。
B 同盟は盤面全体で多数派になるように、形成する。
- 代表的なのが、独墺伊を包囲する『端国4国連合(英仏露土)』だったり独墺伊の中央三国同盟に(大体は独墺と相性の良い英、墺土同盟を活かした土)を加えた『中央三国+1、+2』などがあります。
ということであり、ここから
C 同盟国間でも、自国に最も利益を得られる形に盤面を形成するために外交と行軍を調整する。
と続きます。 続きますが、CはまずBまで持って行けないと行えません。
ですから、ディプロマシーの交渉とは同盟による多数派の形成と維持、少数派になってしまった場合には多数派の切り崩しや多数派への乗り換え、といった内容が主となります。
ですから、「中立」と言った時点でこの枠組みから自分から外れることになります。
私は初回の方と同卓した経験は結構多い方で、「まず最初は中立で行きます。」みたいなこと言われることもまた多いのですが、心中は「じゃあ私にはどうしろっていうんです?」みたいになっています(勿論「それはあまり良くないですよ」みたいな説得はしますが)。
そんな時にもう一方の同盟候補国から具体的なプランを提示されたり、またはこちらの提示するプランを承諾頂いた場面では、同盟が成立するでしょう、そうするしかないからです。
――― 『「中立」という単語を口にしたプレイヤーは相手にしないことにしている。 相手にする価値が無いからだ。』 LI氏
- 「中立」をなぜ選ぶのか? その場合の影響
正直、私は「中立」をなぜ選ぶのか?良く解っていません。
ただ相手に聞くことはできるので、その理由を聞いてみると大体において、
「まずは状況を見定めたい。」みたいな答えが返ってきます。
状況がはっきりしないので中立、という訳です。
ちょっと厳しい表現かもしれませんが、私はこれを「自壊」に他ならないと考えてます。
まず、自国に有利な状況を構築するために外交時間が設けられています。
その間にプランを構築し、(相手の理解度に合わせた形で)他国に(友好的な笑顔と態度で)提示し、協議し、妥結し、その結果をもって次につなげる形でさらに多数派を獲得するために動き、といった一連の行為が必要となります。
状況を「はっきりさせる」ための努力こそが外交です。
それが終われば行軍です。
今までの流れを振り返り、一番良い形はどうあるべきでしょう?
こうだ!と思う形はあるでしょうが、明示された要素で「何か」が保証されないのがディプロマシーです。
それ故、確実に「はっきりした(担保された)」状況はありません。
実際思っていたのとは全く違った展開が起こることなど珍しくもないです。
ですが、それらの不安や疑念に打ち勝って初めて交渉に沿った行動がとれます。
しかし「中立的な外交や行軍」を取ればそれらに向けた姿勢のすべては必要無くなります。
ですが同時に「状況をコントロールしよう、そのために全力を傾けよう」「状況は完全にコントロールできるわけでは無い、がその上で決断しよう」とする意識も同時に失われます。
そしてディプロマシーで大切なのは正に上記の「姿勢」であり、「中立」からはそれは生まれないのです。
――― 『状況? 状況だって? それが一体どうしたって言うんだね? いいかね、状況というものは私がつくるのだ!』 ナポレオン・ボナパルト
まとめ
私の知るベテランは皆「中立」といった考えに基本的には否定的であるようです。
それはゲームの構造に適合しない、といったことだけではなく、外交や行軍における「良い姿勢」に反しており、実を結ばないからです。
――― 師曰く『あなたがディプロマシーで中立的な外交・行軍をとっているということは、「あなたはうまくプレイできてない」ということです。』
以上
補記
「中立」がそんなに失敗しなかったり、逆にうまく行く場合もあるように思います。
全員が初心者だったり、ほぼほぼそうだったりする場合です。
なぜそう働くのかは今回は割愛。
逆にベテランの割合が多い場合、中立的な言動が良い方向に働く可能性はその割合に反比例することになるでしょう。 今回の内容が非常に強く影響するからです。